病名がついた日からの自分

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病名がついた日からの自分の変化を扱う導入回。全10話の目次つき。

病名がつくと、自分の輪郭が一度、書き換わります。

病名がつく前と後

長く続く不調を抱えていた人が、ある日、医師から病名を告げられます。それまで「原因不明の不調」として漂っていたものが、一つの名前を、もちます。病名がつくと、本人の中で、何かが変わります。本記事では、その「病名がつく日からの自分」を、整理します。慢性の病気と、ゆっくり付き合っていくための、出発点として扱います。

病名がつくまでには、多くの場合、長い道のりがあります。何度も病院に通い、検査を重ね、原因が分からない時期があります。病名がついた瞬間、本人は、安堵と動揺が、同時に訪れることが多い。安堵は「これでようやく対処できる」という気持ち、動揺は「自分が病気だと公式に決まった」という気持ちです。

「病名」という言葉の重み

病名は、医学的には、診断と治療のための識別子です。しかし、本人にとっては、それだけではありません。病名は、本人のアイデンティティに、新しい層を、加えます。「私は◯◯という病気を持つ人」という、新しい自己像が生まれます。

この自己像の変化は、すぐには受け入れられないことが、多くあります。病名を、自分の言葉として、声に出すまで、時間がかかる人もいます。これは、本人の自然な反応です。急ぐ必要はありません。

「告知」の瞬間

医師から病名を告げられる瞬間、本人の頭は、しばしば真っ白になります。医師がその後に話す、治療の方針、生活上の注意点などが、頭に入らなくなります。これは、ショック反応の一つです。

告知の場には、できれば、家族や信頼できる人を、一緒に連れて行きます。本人の代わりに、医師の説明を、メモする役割を、頼みます。後から、二人で話の内容を、振り返ることができます。一人で抱えなくて構いません。

「説明を再度聞く」権利

告知の場で、頭が真っ白になり、医師の説明が分からなかった場合、後日、もう一度説明を聞く機会を、求めることができます。これは、本人の正当な権利です。医師は、本人が理解するまで、説明することが、医療の基本です。

「先日の告知の時、ショックで内容が頭に入りませんでした。もう一度、説明していただけますか」と、率直に頼みます。医師は、応じてくれます。前のシリーズで触れた 結果に動揺した時の対応の発想を、ここでも応用します。

「病気を持つ自分」を恥じない

病名がついた本人の中に、「病気を持つ自分は、価値が低い」という思いが、生まれることがあります。これは、社会の中の、病気への偏見を、本人が内面化したものです。本人自身の責任ではありません。

病気を持つことは、人生の中で起こり得る、自然な出来事です。健康だった時期も、病気を持つ時期も、同じ本人です。価値が変わるわけではありません。これを、本人が、自分の中で、繰り返し確認します。

病名がついた日からの自分

「家族に告げる」タイミング

病名を、家族にいつ告げるかは、本人の選択です。告知を受けた直後に告げる人もいれば、自分の中で整理してから告げる人もいます。どちらが正しいということは、ありません。

家族に告げる時、本人は、自分自身もまだ整理が済んでいないことが、多いです。家族の反応に、本人がさらに動揺することも、あります。家族と、ゆっくり、何度かに分けて話す方が、お互いにとって、楽な場合があります。

「ネット情報」との距離

病名がついた直後、本人は、その病気についてネット検索を、繰り返しがちです。これは、自然な反応です。情報を集めることで、不安をコントロールしようとします。

しかし、ネット情報には、最悪のケース、不確実な情報、本人の不安を煽る情報が、含まれます。検索の量と範囲を、自分で制限します。信頼できる情報源(専門学会、公的医療機関、患者団体の公式情報)に、限定するのが、安全です。前のシリーズで触れた 症状検索の癖の発想を、ここでも応用します。

「治療方針」を医師と決める

病名がついた後、治療方針を、医師と相談して決めます。治療には、複数の選択肢がある場合があります。本人の生活、価値観、希望を、医師に伝えた上で、共に決めていきます。

すべてを医師任せにせず、しかし本人だけで決めず、医師との対話の中で、決めていきます。本人の納得感が、その後の治療の継続にも、影響します。納得できない治療方針の時は、率直にその気持ちを、医師に伝えます。

「セカンドオピニオン」の選択肢

主治医の方針に、本人が完全に納得できない時、セカンドオピニオン(別の医師の意見を聞くこと)を、検討できます。これは、医療の世界で、認められた権利です。主治医に、セカンドオピニオンを取りたいと伝えても、関係が悪くなることはありません。

セカンドオピニオンを取ることで、本人は、より広い視野で、自分の治療を考えられます。複数の医師の意見が、似ている場合は、主治医の方針への信頼が、深まります。違う場合は、本人が、より考えて選べます。

「症状の波」を観察する

慢性の病気は、症状に波があることが、多いです。良い日もあれば、悪い日もあります。この波を、本人が、観察します。波の存在を知っておくと、悪い日に「もう治らない」と絶望せず、「これは今の波」と、淡々と受け止められます。

波の観察は、症状日記や、簡単なメモで、行います。長く続けると、自分なりのパターンが、見えてきます。何が症状を強める要因か、何が和らげる要因か、本人が、徐々に分かっていきます。

「生活の調整」を始める

病名がついたら、本人の生活を、少しずつ、調整していきます。一気に変える必要は、ありません。睡眠、食事、運動、休息、ストレス管理。これらを、病気と相性の良い形に、整えていきます。

調整は、本人にとって、無理のない範囲で行います。完璧な健康生活を、急に始めると、続きません。小さく、続けやすい形から、始めます。前のシリーズで触れた 生活リズムの確立の発想で、病気と共存できるリズムを、作っていきます。

「仕事」をどうするか

病名がついた後、仕事をどうするかは、大きな問いです。すぐに辞める必要は、ありません。続けながら、症状の様子を見て、調整していきます。会社の人事や産業医に、相談することも、選択肢の一つです。

仕事の調整は、本人の症状、職種、職場の理解度によって、形が変わります。リモート勤務、勤務時間の短縮、業務内容の変更など、選択肢があります。本人の体調を最優先に、考えていきます。

「経済」の見直し

病気によっては、治療費、通院費が、長く続きます。本人の家計を、見直す必要が、出てきます。医療費控除、高額療養費制度、障害年金など、利用できる制度を、調べておきます。

経済的な不安は、本人の心の負担を、増やします。社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、地域の福祉窓口に、相談することで、利用できる制度が、整理できます。一人で抱えず、専門家の助けを借ります。

「感情の波」も自然

病名がついた後、本人の感情は、波打ちます。悲しみ、怒り、不安、諦め、希望、これらが、入れ替わり立ち替わり、訪れます。これは、自然な反応です。感情を、無理に抑え込まなくて構いません。

感情の波が、長く続く、または強すぎる場合は、心療内科、精神科、心理カウンセリングに、相談することを検討します。慢性の病気を持つ人の中には、適応障害やうつ状態を併発する方も、います。心の側のケアも、身体のケアと、同じくらい大切です。

「同病の人」と出会う

同じ病気を持つ人と、本人が出会うことで、孤独感が、和らぐことがあります。患者会、オンラインのコミュニティ、医療機関の患者交流会など、出会いの場が、あります。

ただし、すぐにコミュニティに参加する必要は、ありません。本人が、心の準備ができてから、参加します。コミュニティの選択も、慎重にします。穏やかで、信頼できる場を、選びます。

「今までの自分」を惜しまない

病名がついた後、本人は、「健康だった昔の自分」を、惜しむ気持ちを、抱きやすい。「あの時はこれができた」「今はできない」と、過去と現在を、比べます。これは、自然な気持ちですが、本人を、苦しめます。

過去の自分と、今の自分を、比べる代わりに、今の自分の中で、できることに、集中します。今の自分にも、できることが、たくさんあります。前のシリーズで触れた 比較の罠の発想を、自分自身との比較にも、応用します。

「未来」をすぐに描き直さない

病名がついた直後、本人は、未来の計画を、すべて見直したくなります。仕事の計画、家族との計画、夢、すべてを、病気との関係で、考え直そうとします。

しかし、告知直後の頭で、未来を描き直すのは、難しいことが多い。動揺している頭で決めた計画は、後から、修正が必要になることが、多くあります。少なくとも、数週間から数ヶ月は、大きな決定を、保留することを、お勧めします。

「告知の言葉」を持ち帰る

告知の場で、医師が使った言葉を、本人がそのまま持ち帰り、自分の頭の中で繰り返すと、その言葉が、強い影響を持ち続けます。「進行する病気です」「完治は難しい」など、印象的な表現が、本人の中で、孤立して大きくなることがあります。

言葉を、文脈の中で受け取り直します。医師が同じ場で語った、「治療によって生活の質は維持できる」「ゆっくり進行する」などの周辺情報も、合わせて思い出します。一つの言葉だけを、絶対化しないようにします。

「眠れない夜」への対処

告知の後、しばらくの間、夜眠れなくなる本人が、多くいます。頭の中で、病気のことが、繰り返し回ります。これは自然な反応ですが、長く続くと、本人の体力と気力を、削ります。

眠れない夜が続く場合、無理に一人で耐えず、主治医や心療内科に、相談します。一時的に睡眠の補助を受けることは、悪いことではありません。睡眠が確保されると、本人の心の整理も、進めやすくなります。前のシリーズで触れた 自分との対話の発想で、夜の不安を、紙に書き出して翌朝に持ち越す工夫も、有効です。

「日記」を始める価値

病名がついた日からの日々を、短い日記に、書き留めます。長文でなく、数行で構いません。「今日の体調」「今日の気持ち」「今日できたこと」を、淡々と記録します。これが、後から、本人の歩みを振り返る、貴重な記録になります。

日記は、症状の医学的な記録としても、感情の整理の場としても、機能します。書くことで、頭の中の混乱が、外に出ます。本人の心が、少しずつ整っていきます。

第2話への接続

次回は、病気が日常になるという変化を、扱います。告知の動揺から、生活の中に、病気を組み込んでいく過程を、整理していきます。

無料公開はここまで、次回からは会員限定です。

本記事についての注意

本記事は、慢性の病気と心の側の整理を扱う読み物であり、医療判断を代替するものではありません。具体的な症状、検査、治療方針については、必ず、かかりつけ医や、医療機関に、ご相談ください。「治る・治らない」については、病気の種類、本人の状態、医療の進歩によって、個別の判断が必要です。本記事の表現は、一般的な傾向であり、個別のケースを、断定するものではありません。地域の保健センター、患者団体、医療ソーシャルワーカー、心療内科などの専門の相談窓口も、活用してください。気になる症状がある場合は、自己判断せず、医療機関を受診してください。

今回のまとめ

  • 病名がつくと自己像に新しい層が加わる
  • 告知の動揺と安堵は同時に訪れることが多い
  • 告知の場に家族や信頼できる人を同行
  • 説明を再度聞くのは本人の正当な権利
  • 病気を持つことで価値は変わらない
  • 家族への告げ方とタイミングは本人の選択
  • ネット検索は信頼できる情報源に限定
  • 治療方針は医師との対話で決める
  • セカンドオピニオンも選択肢の一つ
  • 症状の波を観察し絶望を防ぐ
  • 生活の調整は無理のない範囲で始める
  • 仕事の判断は急がず徐々に
  • 医療費等の制度を専門家に相談
  • 感情の波は自然な反応
  • 心の側のケアも身体と同じく大切
  • 同病の人との出会いは心の準備ができてから
  • 過去の自分と比較せず今の自分に集中
  • 告知直後は大きな決定を保留する

シリーズ

持病と暮らす日々の心10話

第1回 / 全10本

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病名がついた日からの自分

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