帰省は休みではないという認識

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帰省を「休み」ではなく労働として整理します。

帰省で疲れるのは、それが休みではないからです。

「帰省=休み」という前提を、いったん外す

前回は、11月になると、本人の体が、年末の予感で重くなる、という話を、扱いました。今回は、年末年始の、本人の消耗の中心にある「帰省」を、休みではなく、労働として、整理します。多くの本人にとって、帰省は、世間の暦の上では、休暇の中に、組み込まれています。しかし、実態は、本人の体力を、強く使う、別種の労働です。

「帰省は休み」と思って臨むと、帰省後の本人の消耗を、本人が、説明できなくなります。「休みだったのに、なぜ疲れているのか」「休みだったのに、なぜ仕事に戻る気力が出ないのか」と、本人が、自分を責める方向に、向かいます。帰省は、休みではない、と、最初に、本人の中で、認識を、整え直します。

移動という、最初の労働

帰省は、まず、移動から始まります。新幹線、飛行機、車、高速バス、と、移動手段はいろいろですが、年末年始の移動は、平時の移動より、大幅に消耗します。混雑、長時間の移動、荷物の重さ、子どもがいる場合の世話、と、移動の中に、複数の負荷が、重なります。

移動だけで、本人の体力の、かなりの部分が、消費されます。実家や義実家に到着した時点で、本人は、すでに、ある程度、疲れています。この疲れを、家族や親戚は、見えていないことが、多いです。「移動なんて、座っているだけでしょう」と、軽く扱われることが、あります。

到着後の「家事労働」

実家、義実家に到着すると、本人は、客人ではなく、家族の一員として、家事労働の一部を、担うことに、なります。配膳の手伝い、後片付け、子どもの世話、買い出し、と、本人が手を動かす場面が、続きます。本人の家とは違う動線で、慣れない作業を、します。

慣れない動線での家事は、本人の家での家事より、消耗します。台所の使い方が違う、収納が違う、調味料の置き場が違う、と、いちいち、本人の頭が、確認を求められます。本人の頭が、確認に追われると、体の動きも、効率が下がります。 環境が変わると消耗するという章 の発想が、ここでも、有効です。

気を使う、という労働

帰省中、本人は、家族、親戚、義家族、近隣の人たち、に、気を使い続けます。会話の選択、話す相手、座る位置、食べる量、寝る時間、と、本人の動作のひとつひとつに、判断が、伴います。これは、本人の家での生活では、ほとんど発生しない、頭の労働です。

気を使う労働は、外から見えません。本人が、静かに座って、笑顔で頷いている間にも、本人の頭の中では、いくつもの判断が、走っています。この見えない労働が、帰省での消耗の、大きな部分を、占めます。家族や親戚は、本人の気遣いの量を、見積もりにくいです。

「実家のリズム」と「本人のリズム」の差

本人が、自分の家で確立しているリズムと、実家のリズムは、違うことが、多いです。朝食の時間、入浴の時間、寝る時間、テレビの音量、家族の会話の濃さ、と、本人の感覚から、ずれた要素が、いくつもあります。本人の体は、このずれに、適応する必要が、あります。

適応は、数日では、完了しません。帰省の数日間、本人の体は、ずっと、適応の途中の状態で、過ごします。完全に慣れる前に、帰省の期間が、終わります。適応に使われる体力が、帰省の消耗の、もう一つの源です。

「義実家」という、別種の労働

本人が、義実家に帰省する場合、消耗は、実家への帰省より、さらに、大きくなることが、多いです。義実家では、本人が、家族の一員でありながら、外部の人間でもある、という両義的な立場に、置かれます。家族として手伝うことも、求められ、外部の人間として、遠慮することも、求められます。

この両義性は、本人の判断を、常に、走らせます。「ここで手伝うべきか、それとも控えるべきか」「ここで言うべきか、黙るべきか」と、本人の頭の中で、判断が、続きます。義実家での数日は、ほぼ、判断の連続です。 義実家での宿泊の章 でも、扱う事柄です。

帰省は休みではないという認識

「お客様」扱いも、別種の消耗

逆に、義実家や、頻繁に会わない親戚の家で、本人が、お客様扱いされる場合、別種の消耗が、起こります。お客様として、お茶を出され、丁寧に応対されるあいだ、本人は、お客様にふさわしい振る舞いを、続けなければなりません。家族のように、くつろぐこともできず、外の人として、適切に距離を取り続ける必要が、あります。

お客様扱いの数時間は、緊張の数時間で、あります。家族として混じる労働と、お客様として振る舞う労働は、消耗の質は違いますが、どちらも、消耗します。中間の立ち位置を、ゆっくり取れる関係というのは、実は、なかなか、ありません。

会話の労働

帰省中、本人は、たくさんの会話を、求められます。久しぶりに会う親戚、近所の人、いとこ、と、会話の相手が、入れ替わります。それぞれに、近況を、伝え直す必要が、あります。同じ話を、複数回、繰り返すことになります。

会話を、本人が、楽しめている場面もありますが、すべてを楽しめているわけでは、ありません。詮索されたくない話題、軽く扱われたくない話題、踏み込まれたくない領域、を、本人の側で、避けながら、会話を、続けます。会話を、避けながら続けるのは、純粋な会話より、消耗します。

「子どもの世話」が、二重に

本人が、子連れで帰省する場合、子どもの世話は、本人の家での世話と、別物に、なります。実家、義実家の環境で、子どもが、機嫌を崩しやすい、寝つきが悪い、慣れない人に会って不安定になる、と、子ども自身も、適応に消耗しています。本人は、その子どもの世話を、しながら、自分自身の家族対応も、こなします。

「子どもがいると、家族が喜んでくれて、楽になる」と、想定して帰省した本人が、実際には、子どもの世話と、家族対応の二重で、消耗することは、よく、あります。これは、本人の準備不足ではなく、構造的に、そうなる、というだけです。 子連れ帰省の章 でも、扱います。

「楽しい時間」も、消耗する

帰省中に、楽しい時間も、あります。久しぶりに会った祖父母と話せた、いとこと一緒に過ごせた、子どもが喜んでいた、と、本人にとって、肯定的な瞬間が、含まれます。これらの肯定的な瞬間も、本人の体力を、使います。

楽しい時間は、消耗しないと、思いがちですが、実際には、本人の感情を、強く動かしています。感情を強く動かすことは、本人の体力を、使う、という意味で、楽しい時間も、休みではありません。帰省中の本人は、ネガティブな瞬間でも、ポジティブな瞬間でも、ずっと、体力を、使っています。

「年末年始の連休」を、休みと数えない

暦の上で、12月29日から1月3日まで、連休であることが、多いです。本人が、この期間を、帰省で過ごす場合、この期間を、本人の年間の休暇日数として、数えない方が、いいです。帰省は、別種の労働で、本人の体は、休まっていません。

「今年も連休があってよかった」と、本人が、自分に言い聞かせる必要は、ありません。連休があっても、帰省で消耗していれば、それは、休みでは、ありません。本人の体に、別に、休みを、確保する必要が、あります。

「自宅で休む年末年始」も、選択肢

帰省や、親戚との集まりを、本人が、いったん、すべて見送って、自宅で休む年末年始という選択肢も、あります。世間が動いている時期に、本人が、家で静かに過ごす数日は、平時の休日とは、別の質を、持ちます。街が静かで、職場からの連絡もなく、本人の生活のリズムが、いつもより、ゆっくり、動きます。

自宅で休む年末年始は、初めて経験する本人にとっては、最初は、寂しさを、感じるかもしれません。けれど、数年続けると、その静かさが、本人にとって、年に一回の、貴重な休みの時間になることが、あります。世間の流れに、毎年、合わせる必要は、ありません。

帰省と「家族の歴史」

帰省は、家族の歴史の中で、毎年、繰り返されてきた行事です。本人の親世代、祖父母世代も、それぞれの時代の帰省を、経験してきています。本人が、帰省を労働として見直すとき、過去の世代の帰省が、どんなものだったか、を、想像してみると、家族の歴史の中での、本人の現在の選択の位置が、見えてきます。

過去の世代も、それぞれの労働として、帰省を、こなしてきました。本人の母が、義実家への帰省を、どう感じていたか、を、いまの目で、本人が、聞いてみることも、できます。家族の歴史を共有することは、本人の選択を、孤立した個人の選択ではなく、家族の中の継続として、見直す機会にも、なります。

「行ってよかった」だけで終わらない振り返り

帰省から戻った後、本人の中で、振り返りの時間を、取ります。「行ってよかったか」だけでなく、「何が消耗したか」「次回はどう調整するか」「来年も、同じ形でいいか」を、本人の中で、整理しておきます。振り返りは、ノートでも、配偶者との会話でも、本人にとってやりやすい形で、十分です。

振り返りを残しておくと、来年の年末が近づいてきたときに、本人が、ゼロから判断しなくて、すみます。「去年は、これが消耗した」「去年は、これがうまくいった」と、過去の本人が、いまの本人を、助けてくれます。本人の経験は、本人だけの、貴重な資源です。

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本シリーズは、第3話までは無料で公開しています。第4話以降は、会員限定の公開です。会員になっていただくと、過去シリーズの会員限定回も、すべてお読みいただけます。年末年始の各場面の続きの記事を、お読みいただけます。

「帰省は労働である」と、家族で共有する

本人の家族(配偶者と子ども)のあいだで、「帰省は休みではなく、労働である」という認識を、共有しておきます。共有しておくと、帰省後の本人の消耗を、家族が、見えていることに、なります。本人が、家族から、「楽しかったでしょう」「休めたでしょう」と、消耗が見えない反応を、受けることが、減ります。

配偶者と、帰省の労働を、どう分担するかも、事前に、話しておきます。両方の実家への帰省の年間バランス、滞在日数、宿泊するかしないか、と、決められる事柄は、多いです。 配偶者と帰省バランスの章 でも、詳しく、扱います。

帰省の「総コスト」を、見える化する

帰省の前に、帰省の総コストを、本人の中で、見える化しておきます。交通費、宿泊費、贈答品、子どもの世話、本人の体力、本人の時間、と、コストには、複数の種類があります。お金のコストだけでなく、体力と時間のコストも、含めて、考えます。

総コストを見える化すると、「帰省は、これだけの労働を伴うんだ」と、本人の中で、整理されます。整理されると、帰省を、毎年、同じ形でこなす必要は、ない、と、見えてくることが、あります。今年は、滞在日数を短くする、宿泊は外のホテルにする、贈答品を簡素にする、と、調整の余地が、出てきます。

「帰省」と「実家との関係」を、分ける

「帰省を、控えること」と、「実家との関係を、薄くすること」は、別の話です。帰省の頻度を下げても、本人と実家の関係は、続けられます。電話、メッセージ、ビデオ通話、お盆や中元・歳暮、と、関係を保つ手段は、ほかにも、あります。

「帰省しないと、親不孝」「帰省しないと、関係が終わる」という社会的な圧は、本人の中で、いったん、外してみます。関係は、対面の頻度だけで、決まるものでは、ありません。本人の体力に合わせて、関係を、続ける形を、選びます。 距離を保ったまま続けるという章 の発想です。

「いつも通り」を、毎年見直す

多くの家族で、帰省は、「いつも通り」のパターンで、繰り返されます。同じ日程、同じ移動手段、同じ宿泊形態、同じ食事の流れ、と、年ごとに、ほとんど変わりません。「いつも通り」は、楽な側面もありますが、本人の生活のフェーズが変わっていることに、対応できない、という弱点もあります。

仕事が変わった、子どもが成長した、本人の体力が落ちた、両親が高齢になった、と、本人の状況は、毎年、少しずつ、変わります。「いつも通り」を、毎年、見直して、本人の現在に、合わせていきます。見直すことは、家族への愛情の減退では、ありません。本人の現実への、誠実な対応です。

第3話への接続

次回は、無料公開の最終回として、「帰らない年を選ぶときの言葉」を、扱います。今年は、帰省を見送る、という選択を、本人がしたとき、家族や親戚に、どう伝えるか、その言葉の組み立て方を、整理します。帰らないことは、家族への愛情の有無とは、別の話です。本人の生活のフェーズに、合わせた、選択の一つです。

本記事についての注意

本記事は心理学的な助言や治療ではなく、帰省という出来事の構造を整理する読み物です。帰省で、深い不眠や不安、生活への支障が継続的に出る場合は、心療内科やカウンセラー、または信頼できる相談窓口に相談してください。緊急時には、よりそいホットライン(0120-279-338)、いのちの電話(0570-783-556)も利用できます。

今回のまとめ

  • 帰省は、休みではなく、移動・家事・気遣い・会話を含む、別種の労働です。
  • 「実家のリズム」「義実家の両義性」「お客様扱い」も、それぞれ、消耗の源です。
  • 楽しい時間も、本人の感情を動かす分、体力を、使います。
  • 連休期間を、本人の休暇日数として、数えない、という見方が、本人を、守ります。
  • 「いつも通り」を、毎年見直して、本人の現在に、合わせていきます。

シリーズ

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