旅行に、行く前から、疲れている本人へ
旅行が、楽しいはずの活動なのに、出発前から、本人が、強く、疲れていることが、あります。「来週、旅行か」と思った瞬間に、気持ちが、重くなる。準備のことを考えると、ため息が、出る。出発の日が、近づくほど、行きたくない気持ちが、強くなる。これは、本人の中に、起きている、自然な反応です。
このシリーズは、旅行で、本人が、疲れることの正体を、心理学的に、整理する読み物です。旅行を、楽しめないことを、責めるのではなく、なぜ、疲れるのか、どう、軽くするか、を、本人の側から、考えていきます。10話を通じて、本人の旅行との付き合い方を、整え直していきます。
「旅行は、楽しいもの」という、前提
世間には、「旅行は、楽しいもの」という、強い前提が、あります。SNS、テレビ、雑誌、と、楽しい旅行の様子が、繰り返し、流れます。職場でも、「夏休みは、どこに行きましたか」「いいですね、楽しそう」と、旅行を、肯定する会話が、多いです。
この前提は、旅行が、本人にとって、楽しいときには、問題に、なりません。けれど、旅行が、本人にとって、消耗の源に、なっているとき、この前提が、本人を、苦しめます。「楽しいはずなのに、楽しめない自分」「みんなが、楽しめているのに、自分だけ、疲れている」と、自己評価を、下げる方向に、働きます。
「旅行が、疲れる」のは、自然
本人の体は、平時の生活に、合わせて、調整されています。住み慣れた家、慣れた職場、慣れた通勤路、慣れた食事、と、本人の体が、覚えている環境の中で、本人は、無意識に、エネルギーを、節約しています。
旅行は、この、慣れた環境から、本人を、引き剥がします。違う寝具、違う食事、違う水、違う気候、違う人、と、本人の体が、すべてに、新たに、対応する必要が、あります。これは、本人の体に、平時以上の、エネルギーを、要求します。旅行が、疲れるのは、本人の体の、自然な反応です。
「準備」が、すでに、旅行の一部
旅行の疲れは、出発の瞬間から、始まるのではありません。準備の段階から、すでに、始まっています。行き先を、決める。日程を、組む。宿を、予約する。荷物を、揃える。仕事の調整を、する。休暇の申請を、出す。家族との予定を、合わせる。と、準備のステップは、多いです。
これらのステップは、すべて、本人の脳に、負荷を、かけます。本人が、出発の前日に、すでに、疲れているのは、準備で、エネルギーを、使い切っているからです。 決定疲れの章 の発想と、共通します。
「想像疲れ」も、ある
準備の中で、本人が、行き先で、何が起きるかを、想像しています。電車の乗り換えがうまくいくか、宿の部屋は、想像通りか、天気は、もつか、同行者と、うまく、過ごせるか、と、たくさんの「もしも」を、本人の頭が、回しています。
この、想像での、シミュレーションは、本人の体には、実際の体験と、近い負荷を、かけます。出発前に、本人は、頭の中で、すでに、旅行を、何度も、しています。実際の旅行が、始まる前に、本人は、すでに、消耗しています。 事前シミュレーションの章 も、参考になります。
「旅行が、楽しめなくなる」時期
若い頃は、旅行が、楽しめた本人が、年齢を、重ねるにつれて、楽しめなくなることが、あります。30代、40代、50代、と、年齢が、上がるほど、旅行の楽しめなさが、増していくことが、多いです。
これは、本人の好みが、変わった、というだけでは、ありません。本人の体力の、変化。仕事や家庭の責任の、増加。平時の生活の、密度の上昇。と、旅行を、楽しむ余裕が、生活の中から、減っている、という背景が、あります。本人が、変わったというより、本人を、取り巻く状況が、変わっています。
「義務としての旅行」
本人の中に、「年に一回は、家族旅行に、行かないと」「夏休みは、どこかに行かないと」「子どもに、旅行の経験を、させないと」と、義務感が、生まれていることが、あります。義務としての旅行は、本人にとって、楽しみではなく、責任に、変わります。
義務化された旅行は、準備の段階から、本人を、追い込みます。「ちゃんとした旅行に、しないと」という、プレッシャーが、本人の中に、生まれます。これが、本人の疲れの、大きな源です。
「行く先で、楽しまないと」
準備に、エネルギーを、使い切った本人が、現地で、「楽しまないと、もったいない」「ここまで来たんだから、楽しまないと」と、自分を、追い込みます。これは、楽しみが、義務に、変わる、最終段階です。
楽しむことを、本人が、自分に、強要すると、楽しみは、消えます。楽しみは、強要できる感情では、ありません。本人の体が、しんどい状態で、楽しみを、求めるのは、無理な要求です。
「平時の疲労」が、旅行に、持ち越される
本人が、旅行に、出発する時、平時の疲労を、すでに、抱えています。仕事のストレス、家庭の用事、人間関係の負荷、と、平時のさまざまな疲労が、本人の体に、蓄積しています。旅行は、これらを、リセットする時間と、世間では、思われていますが、実際は、違います。
平時の疲労を、抱えたまま、旅行に、出発すると、旅行先で、本人の体は、平時の疲労と、旅行による新たな疲労の、両方を、抱えます。リセットされるどころか、疲労が、重なります。
「旅行で、リセットされる」は、幻想
「旅行に行けば、リフレッシュできる」「旅行で、生まれ変われる」という、世間の言葉が、本人の中に、植え付けられています。けれど、本人の経験では、旅行から戻った直後の方が、出発前よりも、疲れていることが、多いです。
これは、本人が、旅行の楽しみ方を、知らないからでは、ありません。多くの旅行は、本人の体に、リセット効果を、もたらすほど、軽い活動ではない、という事実です。リセットを、旅行に、期待しすぎないことが、本人を、守ります。
「行きたい旅行」と、「行かないといけない旅行」
本人の中で、旅行を、二種類に、分けて、認識します。「本人が、心から、行きたい旅行」と、「行かないといけない、と思っている旅行」です。前者は、本人のエネルギーを、生む方向に、働きます。後者は、本人のエネルギーを、奪う方向に、働きます。
後者を、減らすことが、本人の旅行疲労を、軽くする、最初のステップです。「行かないといけない」と思っている旅行のうち、本当に、行かないといけないものは、意外に、少ないです。多くは、本人が、勝手に、自分に、課している義務です。
「行かない」も、選択肢
旅行に、行かない、という選択も、本人の生活の中で、十分、有効な選択です。「夏休みは、家で、過ごす」「年に一度の家族旅行を、今年は、見送る」「友人との旅行の誘いを、断る」と、行かない選択が、本人の体と心を、守ります。
世間では、「旅行に行かない=つまらない人」「旅行に行かない=お金がない」と、レッテルが、貼られることが、あります。これを、本人が、内面化しなくて、構いません。本人の判断は、本人の体に、合わせます。
「行く」を、選んだ場合の、軽くし方
旅行に、行く、と本人が、選んだ場合でも、疲労を、軽くする工夫は、いろいろ、あります。日程を、短く、する。同行者を、少なく、する。スケジュールを、ゆるく、する。名所めぐりを、減らす。写真を、撮らない時間を、置く。と、軽くするやり方が、あります。
これらの工夫を、シリーズの後半で、扱っていきます。「旅行は、こうあるべき」という、世間の標準を、本人が、いったん、外して、本人の体に、合った形を、選んでいきます。
「家族や同行者」との、ずれ
本人が、旅行を、軽くしたいと、思っていても、同行者(家族、友人、配偶者)が、密度の高い旅行を、望むことが、あります。「せっかく来たんだから、たくさん回ろう」「もっと、いろんな場所に行こう」と、同行者から、追加の活動を、求められます。
同行者との、旅行の密度の、すり合わせが、本人の疲労を、左右します。事前に、「私は、ゆっくり、過ごしたい」と、伝えておく。当日、「少し、休憩したい」と、軽く、申し出る。と、同行者との、ペースの調整を、本人の側から、行います。
「旅行から戻った後」の、立て直し
旅行から、戻った後の、本人の体は、平時より、強く、消耗しています。戻った日と、その翌日は、休息に、当てるのが、理想です。仕事や、家事の予定を、入れすぎず、家で、ゆっくり、過ごします。これは、年末年始の連休明けと、同じ発想です。
「旅行は、リフレッシュのはずだから、戻ったら、すぐ、フル回転」というスケジュールは、本人を、消耗させます。旅行は、本人の体に、負荷を、かけているという事実を、本人が、認めます。
「楽しめなかった」を、責めない
旅行から、戻って、「あまり、楽しめなかった」「疲れだけが、残った」と、本人が、感じることが、あります。これを、本人が、自分の問題として、責めなくて、構いません。旅行の設定が、本人の状態に、合っていなかった、という、構造の問題です。
「自分は、旅行が、向いていない」と、結論づける必要も、ありません。本人に、合う旅行の形が、まだ、見つかっていない、という、状態です。シリーズを、通じて、本人に合う、旅行の形を、探していきます。
「楽しさ」を、別の活動から、得る
本人が、旅行で、楽しさを、得にくいと、感じる場合、楽しさを、別の活動から、得ることも、できます。平時の中での、本人の好きな、小さな楽しみを、増やします。読書、映画、音楽、散歩、料理、と、平時の中で、本人を、満たす活動が、あります。
「楽しみは、旅行でしか、得られない」という、思い込みを、本人が、外します。 小さな楽しみの章 の発想と、共通します。
このシリーズで、扱うこと
全10話で、旅行の疲労を、軽くする、いろいろな視点を、扱います。楽しまなきゃという圧、計画疲れ、同行者とのペースの差、子連れ旅行、名所めぐり、写真、一人旅と連れ旅、行かない夏、過去の旅行の思い出し方、と、本人の旅行との付き合い方を、多角的に、見ていきます。
すべての話を、本人が、すべて、取り入れる必要は、ありません。本人の状況に、合う部分だけを、選んで、参考にしてください。本人なりの、旅行の形を、整えていく材料として、シリーズを、使っていただきたいと、思います。
「シリーズの読み方」
シリーズは、第3話まで、無料で、公開しています。第4話以降は、会員限定です。順番に、読んでいただいても、構いませんし、本人の状況に、合う話だけ、抜き出して、読んでいただいても、構いません。
各話は、それぞれが、独立した内容で、書かれています。「自分は、これに当てはまる」と、感じる話から、入っていただくのが、おすすめです。
無料公開はここまで、次回からは会員限定です。
第2話への接続
次回は、旅行の中で、本人を、追い込む「楽しまなきゃ」という圧の構造を、扱います。楽しもうとするほど、楽しみが、遠のく、という心理の動きを、整理します。本人の中で、楽しむことを、目的から、外す視点を、考えていきます。
本記事についての注意
本記事は心理学的な助言や治療ではなく、旅行疲労との付き合い方を整理する読み物です。旅行に対して、強い恐怖や、不安、生活への支障が出る場合は、心療内科やカウンセラーに相談してください。緊急時には、よりそいホットライン(0120-279-338)、いのちの電話(0570-783-556)も利用できます。
今回のまとめ
- 旅行で、疲れることは、本人の体の、自然な反応です。
- 準備の段階から、すでに、旅行の疲労は、始まっています。
- 「旅行で、リセット」は、幻想です。期待しすぎないことが、本人を、守ります。
- 「行かない」も、十分、有効な選択肢です。
- 本人に合う、旅行の形を、シリーズを通じて、探していきます。