謝罪が詰まる時間と、過剰な自責の区別

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謝罪の言葉が出ない時間と、必要以上に自分を責める動きを切り分ける無料最終回。安全配慮の前提も整理します。

謝れない時間と、責めすぎる動きは別物です。

「ごめんなさい」が、なかなか出ない時間

第3話では、謝罪の言葉が詰まる時間と、過剰に自分を責める動きとを、切り分けて扱います。本人が、あの一言を言うべきだったのに言えなかった、と数日間、もしくは数ヶ月、心の中で抱え続けることが、あります。本人にとっては、その時間そのものが、すでに、苦しい時間です。

言えなかった時間が長く続くこと自体は、本人を悪い人間にしたわけでは、ありません。本人と相手のあいだに、すぐには言葉にならない事情が、ある、というだけのことです。詰まりの時間の中身を、本シリーズでは、本人を責めずに、整理していきます。

詰まりは「謝らない」とは違う

謝罪が詰まっている本人と、謝罪を最初から拒否している本人は、別の状態です。詰まっている本人は、相手に悪いと思っている、本人の中で謝りたい気持ちはある、けれど口が動かない、もしくは、適切な場面が見つからない。これは、本人の中で、すでに、相手への配慮が、たっぷり動いています。

謝らない、と決めている本人は、本人の中で謝るべきだとも思っていないか、もしくは、相手への謝罪を本人の側の選択として完全に外しています。詰まりとは、別の状態です。本シリーズは、後者の本人に何かを言うのではなく、前者の本人の苦しさを、扱います。

謝罪が詰まる時間と、過剰な自責の区別

過剰な自責との区別

謝罪が詰まる本人の中には、一見、相手に対する罪悪感が強いように見えて、実は、自分自身に対する過剰な自責が、ぐるぐる回っているだけ、というケースが、しばしばあります。「自分はなんてダメな人間だ」「あんなことをしてしまった自分が許せない」という、本人の内側の責めが、強くなりすぎている状態、です。

この内側の責めは、相手に届く謝罪とは、別の動きです。本人の中で責めばかりが大きくなると、不思議なことに、相手への謝罪は、かえって動かなくなります。自分を責めることでエネルギーを使い切ってしまい、相手に向ける動作が、残らなくなります。

「謝らなければ」の重みが、口を止める

本人が、謝罪に必要以上の重みをかけてしまうと、口は、かえって動かなくなります。完璧な謝罪、相手の心に必ず届く謝罪、相手のすべての怒りを溶かす謝罪、を頭の中で組み立てようとすると、本人の口は、いつまでも動かないままで、終わります。

謝罪は、もっと小さな言葉でも、構いません。「あのときは悪かった」「ごめん」「気がつかなくて、ごめんなさい」というレベルで、十分です。完璧な謝罪を目指しすぎると、ふつうの謝罪さえ、本人の中で出にくくなります。中身のない謝罪 も、合わせて参考になります。

謝罪のタイミングは一度きりではない

多くの本人が、謝罪は「その場ですぐ」言わないと意味がない、と思い込んでいます。けれど、関係の中での謝罪は、その場で言えなかったあとも、一週間後、一ヶ月後、半年後、と、何度でも、機会があります。タイミングを逃した一度きりで、本人を責める必要は、ありません。

本人が、後日改めて謝罪を口にする場面は、関係の中で、むしろ深く届くことが、あります。時間を置いて口にする謝罪は、本人の側でその件を抱え続けていた、という事実を、相手に間接的に伝えます。修復が止まる時間 も参考になります。

謝らない、と決めることも選択になる

本シリーズは、すべての場面で本人が謝るべきだ、とは言いません。本人が、内省を経たうえで、この件では謝らない、と決めることも、立派な選択です。本人の側に明確な事情がある場合、相手の側に明確な非がある場合、すでに相手との関係が安全ではない場合、などです。

謝らない選択を、本人が、自分の中で罪のように扱うと、本人は二重に追い込まれます。謝罪が常に必要なわけではない の発想は、本人の中の判断を、軽くします。

「謝らせる関係」を、見直す

本人が、ある相手にばかり、繰り返し謝らされている関係は、関係の構造そのものを、見直す対象になります。本人の側にだけ問題があるわけではなく、相手の側が、本人に謝罪を絶えず求めている構造、というのが、関係の中に、できている場合があります。

こうした関係の中で、本人が「ごめんなさい」を絞り出すたびに、本人の自己像は、削れていきます。本シリーズは、この構造の中での謝罪を、本人に勧めません。接触を減らす選択 や、専門家への相談を、検討してください。

ハラスメント・暴力の文脈での謝罪

ハラスメントや家庭内暴力の文脈で、加害者からの謝罪要求に応えて、被害者が「ごめんなさい」を口にすることは、加害者側の支配を強化する装置に、なります。「ごめんと言わせたから許してやった」「お前が悪かったと認めた」という構図が、加害者の中で固定されます。

本シリーズは、こうした文脈での被害者の謝罪を、絶対に勧めません。安全の確保、距離の確保、専門の相談窓口への連絡が、言葉より先に来ます。各自治体の配偶者暴力相談支援センター、警察、よりそいホットライン、いのちの電話、などを頼ってください。

自責の渦から、出る

過剰な自責が、本人の中でぐるぐる回っている時期に、本人はしばしば、自分の中の自責を、人格の証明のように扱います。「これだけ自分を責められる自分は、まだまともだ」と感じている本人が、います。けれど、自責の強さと、人格の善さは、一対一で対応しません。

自責は、本人を、いまここの動作から、引き剥がします。自責が強い時間ほど、本人は、現実の関係の中で、必要な動きを取れなくなります。自責の渦から本人が一歩出るためには、自責そのものへの距離が、必要です。身体の早期のサイン も参考になります。

「謝らせる側」が満足するまで謝らない

本人が、相手の怒りを完全に解くまで謝り続ける必要は、ありません。相手が満足するまで謝罪を絞り出させようとする関係は、健全な関係ではなく、本人を消耗させる関係です。本人が、本人にとってちょうどよい謝罪を伝えたあとは、相手の怒りの解け具合に、本人の謝罪量を引きずられすぎない、という構えを持ちます。

謝罪は、相手のためだけのものではなく、本人のためのものでも、あります。本人が「自分はあのときこう感じていた、こう伝えた」と本人の中で整理ができたら、本人の側の動作としては、完了です。あとは、関係の側の動きを、待ちます。

謝罪の言葉と、修復の動作は別物

「ごめんなさい」と本人が口にしたあとに、関係の修復にはまだ動作が、必要です。同じ過ちを繰り返さないための調整、相手にとって必要な距離の確保、関係の頻度の見直し、こうした実質的な動きを、本人が伴わせます。言葉だけでは、修復には足りません。

逆に、言葉が出ない時期にも、実質的な動きで、本人は修復を進められます。相手の負担を減らす、相手との関係の中で本人の振る舞いを変える、これらは、口を経由しない修復です。謝罪が届かない時間 も参考になります。

「許してもらえなかった」を抱える時間

本人が謝罪を口にしても、相手が、本人を許してくれないことが、あります。これは、本人の謝罪が足りなかった、本人の人格が悪いから、という意味では、必ずしも、ありません。相手の側にも、相手の時間と、相手の感情が、あります。

許してもらえなかった、という事実を、本人が抱える時間が、関係の中には、あります。この時間を、本人が無理に短縮しようとせず、抱えたまま生きる、という構えを、持ちます。長い時間の中で、関係が、新しい形を見つけることがあります。見つけられないままで、終わることもあります。それも、一つの形です。

謝らない側の自由

本シリーズは、相手の側に、本人を許す自由があると同時に、許さない自由もある、と整理します。同じく、本人の側にも、謝る自由と謝らない自由があり、その両方は、本人のものです。これは、関係の中の対等性を、守るための前提です。

本人が、相手に許しを強制できないのと同じく、相手も、本人に謝罪を強制できません。お互いの自由のあいだで、関係は、揺れながら、動いていきます。きょうだいに対するノー の発想も、応用できます。

専門家を頼る目安

謝罪の詰まりが、本人の生活を強く圧迫している、過去のトラウマや家庭内の問題と結びついている、自責が強くて眠れない・食べられない・動けない、という時期には、心療内科、精神科、心理カウンセリングなど、専門家に相談することを、検討してください。

本人一人で抱え続けるには重すぎる詰まり、というものは、確かに、あります。本記事は、医学的な診断や治療を代替するものでは、ありません。専門家を頼ることは、本人の弱さではなく、現実の認識です。

謝罪を書き出してから、口にする

口で謝るのが詰まる本人は、いったん、紙やメモアプリに、謝罪の言葉を書き出してみる、という回り道が、助かることがあります。書き出すあいだに、本人の中で、自分が本当に伝えたいこと、本当に謝りたい部分、謝りたくない部分、が、すこしずつ整理されます。

書き出した言葉を、そのまま相手に送る必要は、ありません。書き出した中から、口で伝えられる部分だけを、口に乗せる、という運用もできます。書くことは、口の動きの予行ではなく、本人の中の整理として、効きます。

相手の反応を、先に決め込まない

謝罪が詰まる本人の頭の中では、しばしば、相手の反応が、すでに決め込まれています。「謝っても、相手は怒り続けるに違いない」「謝ったら、相手は私を見下すに違いない」と、本人の頭が、相手の反応を先読みして、口を止めています。けれど、実際の相手の反応は、本人の予測どおりとは、限りません。

本人の予測の精度を、本人の中で、過信しないようにします。本人が予測している悲観的な反応の半分は、本人の頭の中で組み立てられているだけのことが、たいてい、あります。カレンダーと想像 の発想も、参考になります。

本シリーズの中での第3話の位置

第3話は、無料公開の最終回です。本人が、ここまでの3話を読んで、本人の中の感謝と謝罪の動きを、おおまかに見渡せるようになっていれば、第3話としての役割は、達成されています。第4話以降は、より具体的な場面に、降りていきます。

本人が、続きを読むかどうかは、本人の判断です。読まずに、ここまでの3話を、ふだんの生活の中で何度か読み返すだけでも、構いません。本シリーズの目的は、本人の動きを変えることよりも、本人が動きを観察する目を、少し増やすこと、です。

関連するシリーズ

本テーマと並べて読むと役に立つ既存のシリーズを、挙げておきます。謝罪の構造については 謝罪と修復のシリーズ が中心的に扱います。過剰な自責については 批判のあとの自責 が、家族の中の謝罪については 家族の謝罪 が、参考になります。

また、安全配慮の前提について、本人の関係が安全ではないと感じる場合は、距離・専門相談を優先してください。接触を減らす選択 や、各自治体の配偶者暴力相談支援センターを、頼ってください。

自分の中の謝罪の声を、まず聴く

相手への謝罪を口にする前に、本人の中で動いている、本人自身への謝罪のような声を、まず本人が聴いてみる、という回り道が、ある場合には、効きます。「あんなことをしてしまって、私の中の私に申し訳ない」「もっと丁寧に動けたはずなのに、ごめんね」というような、内側に向けた、静かな声です。

内側の声が、ある程度、本人の中で聴かれたあとに、外側への謝罪の言葉が、ようやく、出てくることが、あります。順番を、相手のためだけにせず、本人の側も、一歩入れます。本人を後回しにし続けると、口は、長く止まったままになります。

無料公開はここまで、次回からは会員限定です。

第4話以降は、会員限定の公開になります。第4話では、声に出す練習と、その限界、を扱います。第5話以降では、テキストで送る場合、親への言葉、子への言葉、パートナーとの循環、過剰さを減らす道、最後に、言葉一つの重みと言葉なしでも伝わるもの、に降りていきます。本人の生活の中の場面に、具体的に降りていく構成です。

続きは、会員ページから、ご覧ください。本シリーズが、本人と相手のあいだの言葉の置き方を、少しでも軽くする助けになれば、幸いです。読み返しのきっかけがほしい本人は、シリーズの最初に戻って、第1話 感謝も謝罪も詰まる時期がある から、もう一度開いてみてください。

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ありがとうとごめんなさいが詰まる10話 シリーズ単品

シリーズ

ありがとうとごめんなさいが詰まる10話

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第3回 / 無料記事

謝罪が詰まる時間と、過剰な自責の区別

謝れない時間と、責めすぎる動きは別物です。

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