第3話|PoC から本番への昇格基準

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本番昇格の判定 5 軸を整理し、PoC 不参加者による追試・コスト 3 シナリオ・ガバナンス整合の確認手順を紹介する。

PoC から本番へ進める判定軸を、再現性/リカバリ性/継続性/コスト/ガバナンスの 5 軸で揃える回。

PoC は終わったが本番に進めない、を防ぐ

PoC が「達成」で終わったあと、なぜか本番昇格に進めない。よく起きる現象です。原因は、PoC のスコープと本番運用のスコープが一致していないからです。

PoC は 1 業務・5 名以下の小さな範囲で検証します。本番は数十〜数百名で動かします。スケールが 10 倍になれば、品質劣化・運用負荷・コスト構造のすべてが変わります。PoC の数字をそのまま本番に当てはめると、全社展開後に破綻するか、慎重さが過ぎて結局展開しないかのどちらかになります。

本番昇格は、PoC とは別の判定軸で行います。

本番昇格の 5 つの判定軸

PoC が達成で終わっても、本番に進める前に次の 5 つを評価します。

  1. 1. 効果の再現性:別の担当者・別の月でも同じ効果が出るか
  2. 2. 失敗のリカバリ性:誤回答や事故が起きたとき、何時間で復旧できるか
  3. 3. 運用の継続性:担当者が異動/退職しても運用が続くか
  4. 4. コストの予測性:利用量が 10 倍になったときのコストが計算できるか
  5. 5. ガバナンスの整合性:全社の AI 運用ルール(許可ツール/禁止データ/監査)に乗っているか

5 軸すべてが「黄」以上で本番昇格、1 つでも「赤」があれば再 PoC か別案検討に戻します。「赤」を残したまま本番に進めると、半年以内にどこかで事故ります。

効果の再現性をどう測るか

PoC は通常、業務を一番把握している担当者と、最も協力的な担当者の組み合わせで進みます。本番では、ベテランも新人も、AI に懐疑的な人も使います。

再現性の確認には、PoC を終えた後に「PoC 不参加の担当者 3 名」で 2 週間の追試をします。結果が PoC と同等なら再現性は確保されています。同等でなければ、PoC で効果が出た要因が「特定の担当者の運用力」に依存していた可能性が高く、本番展開すると効果が下がります。

失敗のリカバリ性

AI は確率的に動くため、誤回答や予期しない出力が必ず発生します。本番昇格前に、次のリカバリ手順を用意します。

  • - 誤回答を検知する仕組み(監視ログ/顧客通報/定期サンプリング)
  • - 影響範囲を特定する手順(誰に届いたか/どこまで広がったか)
  • - 復旧と謝罪の手順(社内通達/顧客連絡/再発防止メモ)

これらの手順を文書化していない状態で本番昇格すると、最初の事故で対応が混乱し、組織として「AI は危ない」という空気が固定化します。

コストの予測性

PoC のコストは少額です。本番では利用量が桁違いになり、トークン料金・人件費・運用工数のいずれかが膨らみます。

本番昇格前に、次の 3 シナリオでコストを試算します。

  • - 標準ケース:想定利用量で月額いくら
  • - 倍ケース:想定の 2 倍利用された場合いくら
  • - 上限ケース:これ以上は予算で止める線をいくらに置くか

上限ケースを最初に決めておかないと、利用が広がり始めたあとで止める判断ができません。「便利になっているのに止められるか」が、半年後の悩みになります。

ガバナンス整合性

部署の本番昇格は、全社の AI 運用ルールに乗っていなければなりません。前シリーズ(部署別 AI 運用)で扱った「許可ツール/禁止データ/承認線/監査/例外プロセス/改定リズム/適用範囲」の 7 項目に整合しているかを最終確認します。

整合していない箇所があれば、ルール側を改定するか、本番昇格を遅らせます。「特例で本番昇格」を許すと、ルールが現場ごとに崩れていきます。

次回予告

次話からは、本番設計の各論に入ります。第4話は既存システム接続パターン(API/ファイル連携/RPA/コピー&ペースト)を扱います。

この回のまとめ:

  • - PoC と本番は判定軸が異なる。本番は 5 軸で評価する。
  • - 再現性/リカバリ性/継続性/コスト予測性/ガバナンス整合性。
  • - 1 つでも赤があれば再 PoC か別案。
  • - PoC 不参加の担当者で追試して再現性を測る。
  • - 標準・倍・上限の 3 シナリオでコスト試算する。
  • - ガバナンスの「特例本番昇格」は禁じ手。

シリーズ

実装設計 ── AI を本番に乗せるための 10 話

第3回 / 全10本

第1回

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第2回

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第3回

第3話|PoC から本番への昇格基準

PoC から本番へ進める判定軸を、再現性/リカバリ性/継続性/コスト/ガバナンスの 5 軸で揃える回。

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第4回

第4話|既存システムとの接続パターン ── API/ファイル/RPA の使い分け

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社内 wiki/文書/FAQ/ログを AI が使える形に整えるデータ準備の現実解を扱う回。

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