「で、次は何を聞けばいいの?」
前回、カスタム指示を設定して「AIに自己紹介を済ませる」方法を紹介した。これだけで、毎回の入力量は劇的に減る。
だが、多くの人がここで立ち止まる。
「今日の晩ごはん何がいい?」と聞いて、レシピが返ってくる。「ありがとう、これにする」で会話が終わる。翌日、また新しい会話を開いて「明日のごはんは?」と聞く。
一問一答。質問して、答えが返って、おしまい。
これはAIをGoogle検索と同じように使っている状態だ。別に悪くはない。検索より楽で精度も高い。だが、AIの本当のポテンシャルは、一つの会話の中で、タスクを数珠つなぎに連鎖させることにある。
今回紹介するのは「連続プロンプト」というテクニックだ。名前は大げさだが、やっていることは簡単。一つの質問の答えを踏まえて、次の質問を投げる──ただそれだけだ。
具体的に、「晩ごはんのレシピを聞く」という行為が、連続プロンプトでどう変わるかを見てみよう。
一問一答の人の1週間と、連続プロンプトの人の1週間
一問一答パターン(これまで):
- 月曜「今日の晩ごはんのメニュー教えて」→ レシピを見て、足りない材料を自分でメモ → スーパーへ
- 火曜「今日の晩ごはん何がいい?」→ レシピを見て、また足りない材料をメモ → またスーパーへ
- 水曜「簡単に作れるおかず教えて」→ 以下同文
- (以下、金曜まで繰り返し)
毎日AIに聞いて、毎日自分で買い物リストを作って、毎日スーパーに寄っている。AIは便利だが、ワークフロー全体を見ると、実は「レシピの検索」しか自動化できていない。
連続プロンプトパターン(今回の方法):
日曜日に1回だけAIと会話する。
「今週の月〜金の晩ごはんの献立を作って」→ 献立が出てくる → 「この献立に必要な買い物リストを、スーパーの売り場順にまとめて」→ リストが出る → 「日曜の午後に作り置きできるものがあれば、タイムスケジュール付きで段取りを組んで」→ 段取り表が出る
1回の会話で、3つのアウトプットが連続して出てくる。月曜から金曜まで、毎日AIに聞く必要がない。日曜に30分使って、平日は段取り通りに動くだけ。
この差は、使っているAIの性能の違いではない。質問の仕方の違いだけだ。
実践:日曜の午後、30分で1週間を段取る
では、実際にやってみよう。前回設定したカスタム指示(家族構成、アレルギー、生活リズムなど)が入っている前提で進める。まだ設定していない人は、第1回を参照してほしい。
ステップ1:1週間の献立を作らせる
プロンプトはこれだけでいい。
今週の月曜から金曜まで、晩ごはんの献立を作って。主菜と副菜を1品ずつ。汁物は水曜と金曜だけでいい。できるだけ食材を使い回せる構成にして。
ポイントは最後の一文だ。「食材を使い回せる構成にして」。これを入れるだけで、AIは月曜のキャベツの残りを火曜に回し、水曜の鶏むね肉を木曜のサラダにも使う、といった横断的な献立を組んでくれる。
人間が5日分の献立を「食材の使い回し」まで考えて組むのは、かなりの労力だ。冷蔵庫の中身と相談しながら、「あ、でもこれを使うと木曜の材料が足りなくなるな」と行ったり来たりする。AIは、この「頭の中の在庫管理」を一瞬でやってくれる。
出てきた献立を見て、「水曜は子どもの習い事があるからもっと簡単なものに変えて」とか「木曜は魚がいい」とか、修正を入れる。ここが大事で、AIの提案は「たたき台」として使い、最終決定は自分でする。全面的に従う必要はない。
修正が終わったら、次のステップへ進む。同じ会話の中で、続けて質問する。新しいチャットを開く必要はない。
ステップ2:買い物リストを生成させる
この献立に必要な材料の買い物リストを作って。冷蔵庫に今あるもの(鶏もも肉300g、キャベツ半玉、卵6個)は除いて。スーパーの売り場順に並べてくれると助かる。
ここで「売り場順」と指定するのがミソだ。一般的なスーパーマーケットの配置(野菜→肉→魚→豆腐/乳製品→調味料→乾物→冷凍食品)をAIは知っているので、それに沿って並べてくれる。
実際にスーパーで買い物をするとき、リストがカテゴリ別に整理されていれば、売り場を行ったり来たりしなくて済む。「あ、調味料コーナーにもう一回戻らなきゃ」というストレスがなくなる。
さらに、こう追加してもいい。
量は4人分で、日持ちする食材と使い切りの食材を分けて表示して。
こうすると「月曜に使い切る豚薄切り肉200g」と「週の前半で使い切りたいほうれん草1束」のように、優先度がわかるリストになる。冷蔵庫の中で食材をダメにしてしまう、あの罪悪感が減る。
ステップ3:作り置きの段取りをタイムスケジュール化
この献立のうち、日曜の午後に作り置きできるものはある? あれば、何時から始めて何時に終わるか、段取りをタイムスケジュールで組んで。調理の同時進行も考慮して。
これが連続プロンプトの真骨頂だ。
AIはステップ1で作った献立の内容を「覚えている」ので、その中から作り置き可能なメニューを自動でピックアップしてくれる。そして、こんな段取り表を出してくる。
日曜 14:00〜15:30 作り置きプラン
14:00 きんぴらごぼう用のごぼうと人参を切る。鍋に水を張って味噌汁用の出汁を取り始める 14:10 きんぴらを炒め始める。同時に、ほうれん草を茹でるお湯を沸かす 14:20 ほうれん草を茹でて冷水にとる。きんぴらの味付け 14:30 ほうれん草のおひたしを仕上げて容器へ。鶏そぼろの材料を準備 14:40 鶏そぼろを炒める。きんぴらを冷まして容器へ 14:50 鶏そぼろ完成。容器に移す 15:00 キッチンの片付け 15:10 完了! 3品の作り置きが冷蔵庫に入りました
1時間半で3品。しかも「ごぼうを切っている間にお湯を沸かす」「きんぴらを炒めている間にほうれん草を茹でる」といった同時進行の段取りまで組んでくれる。
料理が得意な人なら頭の中で自然にやっていることだが、「段取りが苦手」「何から手をつけていいかわからない」という人にとって、この分刻みの指示書は革命的だ。
なぜ「連続」が大事なのか──文脈の蓄積という武器
ここで少し、仕組みの話をしよう。難しい話ではない。
AIは、一つの会話の中ではそれまでのやり取りをすべて覚えている。ステップ1で出した献立の内容は、ステップ2やステップ3でも参照できる。これを「文脈(コンテキスト)」と呼ぶ。
新しいチャットを開くと、この文脈はリセットされる。だから、ステップごとに新しいチャットで聞くと、毎回「月曜は鶏もも肉のソテーで、火曜は豚の生姜焼きで……」と献立を伝え直さなければならない。
連続プロンプトの本質は、文脈の蓄積を利用して、質問のたびに入力量を減らしていくことだ。
ステップ1の出力がステップ2の入力になり、ステップ2の出力がステップ3の入力になる。人間は「次はこれをやって」と一言指示するだけ。具体的なデータはAIが自分で前の回答から引っ張ってくる。
これは、仕事を部下に頼むときの感覚に近い。
「この企画書の内容をもとに、見積書を作って」と言えば、部下は企画書を読み直して見積書を作る。「さっきの見積書の項目を、クライアント向けのプレゼン資料にまとめて」と言えば、見積書をベースにスライドを作る。いちいち「企画書の内容は、まず市場調査があって、次にターゲット分析があって……」と繰り返す必要はない。
AIの連続プロンプトは、この「優秀な部下への連続指示」とまったく同じだ。
献立以外にも使える──連続プロンプトの応用例
連続プロンプトは、献立だけのテクニックではない。「一つの答えから次のタスクが生まれる」すべての場面で使える。
応用例1:旅行の計画
「来月の3連休、家族で日帰り旅行に行きたい。候補を3つ出して」 → 候補が出る 「2番目のプランで行きたい。午前中の出発で、ランチの場所も含めたタイムスケジュールを作って」 → タイムスケジュールが出る 「持ち物リストも作って。天気予報が雨の場合の代替プランもお願い」 → 持ち物リストと雨天プランが出る
3回の質問で、旅行の計画が完成する。
応用例2:子どもの誕生日パーティーの準備
「小学3年生の女の子の誕生日パーティーを家でやりたい。ゲームや飾り付けのアイデアを出して」 → アイデアリストが出る 「この中から3つ選んだ。必要な材料の買い物リストと、100均で買えるものを分けて」 → 買い物リストが出る 「当日のタイムスケジュールを、14時スタート16時終了で組んで」 → タイムスケジュールが出る
応用例3:資格試験の学習計画
「FP3級の試験が3ヶ月後にある。学習計画を立てて」 → 月ごとの大まかなプランが出る 「1ヶ月目の週ごとのスケジュールをもっと具体的に。平日は30分、土日は1時間勉強できる」 → 週間スケジュールが出る 「今週やるべき内容のチェックリストを作って」 → チェックリストが出る
どの例にも共通しているのは、大きな計画を小さなステップに分解し、それぞれのステップの出力を次のステップに引き継がせているということだ。
「途中で修正」ができるのが人間の強み
連続プロンプトの大きなメリットの一つは、途中で軌道修正できることだ。
ステップ1で献立を出してもらった後、「あ、水曜は義母が来るから品数を増やしたい」と思ったら、その場で修正を入れられる。すると、ステップ2の買い物リストにも自動的に反映される。
これは一問一答ではできない。新しいチャットでリストを作り直すと、変更前の献立がベースになってしまう可能性がある。同じ会話の中にいるからこそ、「さっきの献立の水曜だけ変えて」が通じる。
ここで重要な原則がある。
AIの提案は「たたき台」であって、「最終決定」ではない。
AIは5日分の献立を数秒で出してくれるが、「うちの子、実はピーマン食べないんだよな」とか「木曜はスーパーに寄れないから、月曜の買い物で揃えられるメニューに変えたい」とか、AIには見えない「生活のリアル」がある。
連続プロンプトは、AIに丸投げするための技術ではない。AIに大枠を作らせて、自分の目で細部を調整するための技術だ。主導権は常にあなたにある。
応用テクニック:「出力形式」を指定する
連続プロンプトに慣れてきたら、もう一つだけ覚えておくと便利なテクニックがある。出力形式の指定だ。
「買い物リストを作って」だけでも十分だが、こう付け加えるとさらに使いやすくなる。
買い物リストを、チェックボックス付きのリストで出して
こうすると、AIはこんな形式で出力してくれる。
- [ ] 豚薄切り肉 300g - [ ] ほうれん草 1束 - [ ] ごぼう 1本 - [ ] 木綿豆腐 1丁
これをスマホのメモアプリにコピペすれば、スーパーで買ったものからチェックを入れていける。
他にも、こんな指定が便利だ。
- 「表形式で出して」→ 曜日×メニューの一覧表になる
- 「冷蔵保存の日数も書いて」→ 作り置きの消費期限が一目でわかる
- 「カロリーの目安も入れて」→ 健康管理にも使える
出力形式を指定するのは、連続プロンプトの精度をさらに上げるコツだ。自分が「どんな形で受け取りたいか」をはっきり伝えるだけで、AIの出力がそのまま使えるものになる。
連続プロンプトの「型」──困ったらこの3ステップ
どんな場面でも使える、連続プロンプトの基本パターンを紹介する。
Step 1:全体像を出させる
「〇〇の計画を作って」「〇〇の候補を出して」
Step 2:全体像をもとに、具体的なタスクを展開させる
「それに必要な〇〇をリストアップして」「〇〇の順番で並べ替えて」
Step 3:実行に必要な段取りを組ませる
「いつ何をすればいいか、タイムスケジュールにして」「チェックリストにして」
全体像 → 具体化 → 段取り。この3ステップを意識するだけで、AIの使い方が「検索エンジン」から「プロジェクトマネージャー」に変わる。
今日やること:1週間の献立を、3ステップで作ってみる
理屈はわかった。では、やってみよう。
今度の日曜日(もしくは、1週間の買い物に行く前日)に、以下を試してほしい。
- 1. AIに「来週の月〜金の晩ごはんの献立を作って」と聞く
- 2. 出てきた献立を確認し、気に入らないところを修正する
- 3. 「この献立の買い物リストを、売り場順で作って」と続ける
- 4. 余裕があれば「作り置きの段取り」も頼んでみる
所要時間は15〜30分。これだけで、平日の「今日の晩ごはんどうしよう」という悩みが消える。
冒頭で紹介した一問一答の使い方も十分便利だが、連続プロンプトを覚えると、AIが「ちょっと賢い検索エンジン」から「生活の段取りを丸ごと組んでくれるアシスタント」に進化する。
次回は、キーボード入力すらやめる。スマホのカメラで冷蔵庫の中身を撮影して献立を作らせたり、子どもが持ち帰ったプリントを撮影してカレンダーに予定を入れたり──「画像認識」を使った、もう一段上のAI活用法を紹介する。
次回予告:第3回「テキスト入力すらやめる。『画像認識』を使った名もなき家事のハック」