嫌な感情ほど、すぐ消したくなる
イライラしている自分に気づいたとき、真っ先に思うのは「早くこの気持ちをなんとかしたい」ということです。焦りを感じたときも同じです。じりじりする感覚が嫌だから、何か行動を起こして解消したくなる。それは、とても自然な反応です。
でも、この「すぐになんとかしよう」という動きが、かえって問題をこじらせることがあります。イライラしたまま返した返事が相手を傷つける。焦りのまま決めた判断を後で悔やむ。急いで解消しようとして、別のストレスを生んでしまう。不快な感情を急いで処理しようとすることのリスクは、経験した人も多いのではないでしょうか。
前回まで、気持ちに気づくことと、それを少しだけ言葉にする練習を扱いました。今回は、気づいたあとの話です。特に、イライラや焦りのような不快な感情に気づいたとき、「すぐに対処しない」という選択肢を持つことの意味を考えます。
すぐに対処しようとすると、感情を感じきれない
イライラや焦りに気づいた瞬間、対処に動いてしまうと何が起きるかというと、感情を十分に感じる前に行動に移ってしまいます。すると、自分が本当は何にイライラしていたのか、何に焦っていたのかを知る機会を逃すことになります。
たとえば、仕事で思い通りにいかないことがあってイライラした場合を考えてみます。すぐに「やり方を変えよう」と動く前に、少し立ち止まると、「実はやり方の問題ではなく、自分の意見が聞かれなかったことが悔しかった」と気づくことがあります。本当の感情は、表面に見えている感情の下に隠れていることが多いのです。
急いで対処すると、表面だけを処理して根っこが残ります。少し待つと、根っこのほうが見えてくる。この違いは、日常の小さな場面でも繰り返し起こります。
「感じる」と「反応する」の間に、隙間を作る
ここで持ちたいのは、感じることと反応することの間に、ほんの少しの隙間を作るという発想です。感情を感じた瞬間にすぐ行動するのではなく、数秒でも間を取る。それだけで、反応の質が変わります。
この隙間は、我慢とは違います。我慢は、感情を抑え込んで行動しないことです。隙間を作るのは、感情を認めたうえで、少しだけ時間を置くことです。「いまイライラしている」と気づいて、「でもすぐに何かしなくてもいい」と自分に言い聞かせる。その数秒が、状況の見え方を変えてくれることがあります。
具体的には、深呼吸を一回する、水を飲む、数歩だけ歩く、視線を窓の外に向ける。これくらいの小さな動きで隙間は作れます。大げさなテクニックは必要ありません。ポイントは、感情に気づいた直後に、反射的な行動を少しだけ遅らせることです。