白紙を前に止まる時間は、思った以上に長い
仕事で時間がかかるのは、必ずしも難しい判断だけではありません。何から始めればよいか分からない時間、つまり白紙の前で止まる時間もかなり大きい。
企画書、提案書、告知画像、イベント案内、営業メール、求人票、自己紹介文。どれも完成そのものより、最初の形が出るまでに時間がかかりがちです。だからテンプレートは広がりました。見出しがある。構成がある。置くべき項目がある。色や余白の型がある。すると、人は白紙から始めなくてよくなります。
これは、かなり大きな変化でした。企画やデザインの入り口が低くなり、専門職だけでなく、現場の人がある程度の形まで作れるようになったからです。
ただし、テンプレートは単に速くするだけではありません。仕事の考え方そのものも変えます。人は「何をゼロから考えるか」より、「既にある型のどこを変えるか」で仕事を進めるようになる。ここに便利さもあれば、似通いやすさもあります。
AIがいま広げているのも、実はこの感覚です。文章テンプレート、構成テンプレート、プロンプトテンプレート、バナー案のテンプレート。AIは白紙を埋めるのではなく、白紙をテンプレ化しながら埋めています。
この回では、テンプレートが企画とデザインをどう変えたのかを見ながら、AI時代に型へ任せてよい部分と、自分で持っていたい部分を整理していきます。
この回で扱うこと
- - テンプレートは何を速くし、何を考えなくさせるのか
- - 型が広がると、企画とデザインの仕事はどう変わるのか
- - AIが作る「それっぽさ」とテンプレート文化はどうつながるのか
- - 型に任せてよいものと、任せすぎない方がよいものは何か

テンプレートが変えたのは、「作ること」より「選ぶこと」だった
テンプレートが普及する前は、資料や案内物の見た目や構成を整えるだけでも、それなりに経験が必要でした。余白、見出し、順番、強調、文字量。こうしたものは、ゼロから作るほど難しさが増します。
テンプレートはそこを一気に軽くしました。すると、仕事の重心は「全部を作る」から「どの型を選ぶか」へ移ります。