書くのが楽になるほど、「これは自分の言葉か」が気になってくる
AIを文章に使うとき、多くの人が感じる不安はかなり似ています。
最初の一文が出ない時に助かる。丁寧に言い換えたい時も便利。長い説明を短く整えたい時にも役立つ。使ってみると、たしかに助かる場面は多いです。
けれどその一方で、別の引っかかりが出てきます。
「この文章、整っているけれど、自分の言葉ではない気がする」
「こうやって毎回頼っていたら、書く力が落ちるのではないか」
「うまい文章が出るほど、考えた痕跡が薄くなる気がする」
この感覚は、AI特有のもののように見えます。ですが、文章を書く道具が大きく変わった時にも、よく似た不安はありました。ワープロが広がった時です。
ワープロが普及する前、文章の修正は今よりずっと重い作業でした。手書きなら書き直しが大変で、清書にも時間がかかる。タイプライターでも、途中の差し替えには制約がありました。そこへ、消して、入れ替えて、段落ごと動かして、いくらでも直せる道具が入ってきた。
これは文章の世界をかなり変えました。
その時にも、「簡単に直せるようになると、かえって文章が軽くなるのではないか」「考えが固まる前に見た目だけ整えてしまうのではないか」といった不安はありました。
いまAIに対して感じている違和感は、その延長線上にもあります。
この回では、ワープロが何を変えたのかを手がかりにしながら、AIが文章のどこを助け、どこを薄くしやすいのかを見ていきます。
この回で扱うこと
- - ワープロが変えたのは「書くこと」より「直すこと」だった
- - AIもまた、下書きと改稿の順番を変えている
- - 文章が自分のものでなくなるのはどんな時か
- - AIを使っても自分の声を残しやすい使い方
